くまてつ@日本語教師です。
今回はみんなの日本語 第43課 の学習内容をご紹介します。
「~そうです」は話し手の予測や判断を述べる表現
Vマス形+そうです
子どもの頃、祖父が「明日は雨になるな~」と空を眺めながらつぶやいていて、実際に雨になってとても驚いたことがありました。
そういう経験はありませんでしたか?
すっかり大人になったいま、空模様を読むことはわたしにもできるようなりました。
つまり長年の経験から空の様子、例えば雲の種類や空の色を見てこれからの天気を判断して「雨になりそうだね」なんて言うわけです。
このように「経験」や「知識」などがある人が、何かの様子を見てとり、次に起こることを予想するときに「~そうです」と言います。
次に起こるといっても「すぐに変化が生じる」場合もあれば「変化にはもう少し時間がかかる」場合もあります。
参考書によっては、変化の直前の様子を「直前の様態」、変化するのに時間がかかる場合を「近未来の予想」という場合があります。
いずれにしても話し手の予想であることに違いはありません。
でも「~そうです」の文型がすべて「経験・知識」に基づいているわけではありません。
例えば「ビルが倒れそうです」とか「水があふれそうです」などは特別な知識がなくても予測できます。
反面「風邪をひきそうです」とかは、寒気などの症状が風邪につながるということを知っていない限り言うことができない表現になります。
「Vマス形+そうです」の文法上の注意点
この「Vマス形+そうです」では意志を伴わない動詞(無意志動詞)が使われます。
例えば「できる」「できない」などは当人の意志とは無関係です。さらには感情もコントロールできません。病気になることや、天気を変化させることもやってやろうと思ってできることではありません。そういったことを表す動詞のことを「意志を伴わない動詞」といいます。
例 文
- ビルが倒れそうです。
- 今日は暑くなりそうです。
「倒れる」「暑くなる」はコントロールできません。ただ目の前の状況をみて、そうなると判断しただけです。
形容詞+そうです
そうですは「外見」から「中身」を判断する時に使います。
例 文
- このラーメン、辛そうですね。
- 彼は元気そうでしたよ。
実際にそのラーメンが辛いかどうかは食べてみないとわかりません。
しかしラーメンを見て、おそらく辛いのだろうと判断したときに「辛そうです」と言います。
また「元気そうでした」も同じです。
会った時の印象からすると元気そうだと判断したのですが、本当に元気だったかどうかはわかりません。
このように「見た目」で判断する時に「形容詞+そうです」を使います。
「形容詞+そうです」の文法上の注意点
イ形容詞の場合とナ形容詞の場合
イ形容詞の場合、次のように「そうです」と接続します。
例 文
- そのラーメン辛そうですね。
- その時計、高そうですね。
- 外は暑そうですね。
辛い → 辛そうです
高い → 高そうです
暑い → 暑そうです
イ形容詞の最後の「い」をとって、「そうです」につなげば完成です。
ナ形容詞の場合、次のように「そうです」に接続します。
例 文
- 彼女は元気そうでした。
元気な → 元気そうです
ナ形容詞の「な」をつけずに「そうです」につなげれば完了です。
「形容詞+そうです」は他の人の気持ちを察して言うときに使う。
例 文
- (わたしは)悲しいです
- 彼女は 悲しそうです。
自分の気持ちを表現するときに、外見から判断する必要はありません。
でも他の人の気持ちを言うときはそうではありません。
その人の表情や仕草などから判断しますよね。
それで日本語では、それを「形容詞+そうです」で表現します。
英語や中国語では直接他の人の気持ちに言及してもかまいませんので、日本語とは違うことに注意しておいた方がよいと思います。
「形容詞+そうです」は外見を描写する表現には使えません
たとえば「きれい」とか「かっこいい」とか「かわいい」には使えません。
それは外見そのもので、外見をみて判断することではないからです。
他にも「色」にも使えません。
「赤そうです」とか「青そうです」とは言えないです。
「Vテ形+きます」は移動を伴う行動を表現する方法です
今いる場所から「移動」して、用事を済ませて、「帰ってくる」こと説明できます。
例 文
- ちょっと お昼ご飯 食べてきます。
- たばこ 買ってきます。
会社や学校にいて、その場所から離れるときに、何をしに行くのかを説明しています。
このように言われると、その用件を済ませたら帰ってくるのだろうと聞き手は予測します。
職場や学校で使える表現ですので、しっかり練習しておきましょう。
「行ってきます」と「出かけてきます」?
似たような表現に「行ってきます」と「出かけてきます」があります。
みんなの日本語のガイドによると、「行ってきます」は行き先を言うものの、何をしに行くかを言わない場合に使うとありました。
でも実際の生活で「行ってきます」は職場や学校などに出かけるために家を出るときに使う挨拶のようになっています。
さらに職場では「お昼行ってきます」などと使われる場合もあります。
加えて「出かけてきます」は目的地も出かける目的にも言及する必要がない場合、もしくは話したくない場合に使うと説明されていますが、使用頻度は低そうです。
会社などですこし席を外す際に「ちょっと出かけてきます」と言うこともありましたが、これは会社から出る必要があるときに使っていたように思います。
休憩のためにデスクを離れるときには「ちょっと席外します」などというように思います。
というわけで、使用頻度も低く重要性も感じませんので、場合によってはあまり説明しない方が良いと思います。
「Vテ形+くれませんか」は依頼表現
みんなの日本語の43課よりも前にすでに依頼表現のいくつかを学習しています。
- Vテ形+ください(第14課)
- Vテ形+いただけませんか(第26課)
- Vテ形+くださいませんか(第41課)
これに「Vテ形+くれませんか」が加わります。
丁寧さ違いに関して
丁寧のレベルがそれぞれ異なっていますが、一般的には次のような順序になります。
↑ 丁寧度が低い
Vテ形+ください(第14課)
Vテ形+くれませんか(第43課)
Vテ形+くださいませんか(第41課)
Vテ形+いただけませんか(第26課)
↓ 丁寧度が強い
「Vテ形+くださいませんか」は自分の気持ちを強調していますが、「Vテ形+いただけませんか」は相手の意向を尋ねていますので、「Vテ形+いただけませんか」の方がより丁寧だと言えます。
わたしは「文が長くて、回りくどいほど丁寧だ」と教えていますが、今のところ大きな問題は起きていません。
みんなの日本語 第43課 まとめ
文法的に難しいところはなく、しっかり練習に時間をとれるやりやすい課
練習もしやすく、文法も引っかかりにくいのでやりやすい課だなと思います。
しっかりと練習して、自分の感想や判断を説明したり、職場で生じる場面を設定して「ちょっとコンビニまで行ってきます」とか、「すいません、これコピーとってくれませんか」など同僚と話すことができるようになりたいですね。
くまてつでした。