みんなの日本語

みんなの日本語 初級 第1課のまとめ

くまてつ@日本語教師です。

みんなの日本語を使って日本語を話せない中国人に日本語を教えるという仕事をしています。

どうぞよろしくお願いします。

今回はみんなの日本語の第一課の要点を解説します。具体的な説明については文法ごとにまとめていますのでそちらをご覧ください。

第1課 主語が「人」の名詞文

中国語では自分の名前を言う場合「姓」という語を使うことに注意。

みんなの日本語第1課の要点は「自己紹介」と「名詞文の」の仕組みについて学ぶことです。

みなさんは自己紹介するときに、どのように自分の名前を相手に伝えますか?

おそらく

くまてつ です。
くまてつ と申します。

などと、自分の名前の後に「です」もしくは「申します」という語を追加すると思います。

第1課では「主題」+「は」+「名前」+です。の形を勉強します。

ここで中国人にとって問題となるのは「姓」という漢字です。

この「姓」は動詞で「姓は・・・である」という意味になります。

【例文】

1. 我姓李。
2. 他不是王。

例文1は「わたしは李と申します」という意味になりますし、例文2は「彼は王さんではありません」という意味になります。

ところが日本語の場合は、このように言えます。

【例文】

3. わたしは李です。
4. 彼は王さんではありません。

例文3は名詞文の代表ですね。李という名詞に「です」を接続して述語を作っています。「です」は断定の意味で、話し手は「わたし」が「李」という名前の人物であると断定したという意味になります。

それで、例文4は話し手が「彼」が「王」という名前の人物ではないと断定したという意味になります。中国語母語者の場合、通常名前を言う場合には「姓」という動詞を使いますから、名詞文にて自分の名前を紹介するというのが変な感じに思えるわけです。

とうぜん日本人が中国語を勉強する場合には逆の現象が生じます。

5. 我是铃木。(わたしは鈴木です。)

これは誤用です。我姓铃木 と言うべき所を「我是铃木」と言ってしまったわけです。もちろん中国人は意味を理解できますが、正しくはありません。

6. 我姓铃木。(正しい中国語)

ですから、中国人にとって名前を言うのは「名詞文」ではなくて「動詞文」となります。ここが面倒くさいところです。

英語圏もしくは英語を理解する中国人なら比較的簡単にわかる。

もちろん英語を勉強している生徒であれば、英語と比較して受け入れやすいと考える可能性もあります。

7. I am Suzuki.
8. My name is Suzuki.

日本人が中学校で勉強する自己紹介は例文8の文法ですが、ここでは理解しやすくするために例文7を使います。

「am」つまり「be動詞」で挟まれた2つの名詞「I」と「Suzuki」が同じであるということを言っているこの英文は日本語の「わたしは鈴木です」と同じ意味です。

日本語の「です」も断定の意味で主題(主語)と述語の名詞が同じであることを示しています。

これがわかられば後は楽です。

次のようなバリエーションがあることを生徒は理解できます。

9.   わたしは すずき です。
10. 彼は 山田さん です。
11.(あなたは)佐藤さんですか。
12. わたしは 佐藤ではありません。木村です。

みんなの日本語 初級 第1課で先生が言うべきこと

日本語の名詞文という仕組み

日本語では述語がとっても大事です。述語が「名詞」にて構成されている文を名詞文といいます。

他にも形容詞文と動詞文とあり、形容詞文はさらに「イ形容詞文」と「ナ形容詞文」にわかれます。でも第1課では名詞文にだけ注目した方がいいです。もちろん生徒から他にもあるのかと聞かれれば、答えてもいいと思います。

名詞文の仕組み

名詞文 〇〇〇〇〇の部分は名詞です
非過去・肯定文 〇〇〇〇〇です。
非過去・否定文 〇〇〇〇〇じゃありません。
過去・肯定文 〇〇〇〇〇でした。
過去・否定文 〇〇〇〇〇じゃありませんでした。
疑問文 〇〇〇〇〇ですか。/〇〇〇〇〇でしたか。

日本語の主語には主題と主格という概念があること。

言い換えれば、格助詞の「が」と係助詞の「は」の違いとなります。

これについて説明しても混乱するばかりです。英語にはこのような違いがないそうで、英語教育を受けた後、日本語も同じだろうと思っていると訳がわからなくなるようです。

わたしはここでは、日本語の主語には「主題」と「主格」の2種類があり、助詞の「は」を伴う場合は「主題」助詞の「が」を伴う場合は「主格」だというだけにしています。

そして助詞の「が」を伴う主語は当分出てこないから気にしないようにとも言います。

どうしてまだ勉強していない、助詞の「が」について説明するのか?

第1課で「ミラーさんは」とか「マリアさんは」という助詞の「は」を伴う部分を「主語」と説明すると、後で「ガ格」について勉強するときに混乱するからです。

それで、最初から「主題」という言葉を使うようにしていれば、「ガ格」が登場したときに「今まで勉強してきた主語とこのガ格というものにどういう違いがあるのか?」と悩まずに済みます。

また「格助詞の主題化」がも結構すんなりと理解できます。

日本語の言わなくてもいいことは言わないというルール

自己紹介をする場合「鈴木です」と言うのが普通で、わざわざ「わたしは鈴木です」とは言いません。

また相手を確認する時も「ミラーさんですか」とは聞きますが、「あなたはミラーさんですか」とは言いません。

同様に「わたしはミラーです」と言うと、なんだか外国人との挨拶のようですし、「わたしがミラーです」と言うと大げさな感じもします。

それで「わたし」「あなた」など言わなくても誰を対象としているのかわかる場合は省略するということも伝えましょう。

質問に答える際も、重複するような情報は言わなくても良いと言っておけば、動詞文の疑問を扱うときに生徒は理解しやすくなります。

こう考えてみると、みんなの日本語の第1課は結構難しいですね。

くまてつでした。

ABOUT ME
くまてつ先生
中日・英日翻訳者。中国語母語者にマンツーマンで日本語を教えています。教えた生徒はすでに40人以上。ほとんどが日本へ留学しています。また日本語教師向けのセミナーを毎月2回開催しています。