くまてつ@日本語教師です。
みんなの日本語の第6課は動詞文を勉強します。
加えて「なに」と「なん」の問題が登場します。意味は同じなのに、読み方が違うっていうのは不思議です。
さらに「Vマス形+ませんか」「Vマス形+ましょう」など表現の幅が出てきます。
では全体を概観しましょう。
目的語を伴う動詞文の文法
目的語は助詞の「を」を伴う
目的語を伴う動詞文の使い方をマスターしましょう。
第5課では移動に関係する動詞文を勉強しました。
この例文には目的語はありません。あるのは「東京」という目的地だけです。
しかし次の例文はどうでしょう?
もちろん目的地はありません。あるのは「飲む」という行為と、飲む対象の「ビール」です。
この「飲む」という動詞の対象のことを目的語と言います。
つまりこの例文の目的語は「ビール」です。
この文を中国語で言いますと・・・
我喝啤酒
「喝」という漢字が動詞の「飲みます」です。中国語は語順で意味が決まるので、動詞の後にくる「啤酒」が目的語となります。
それでよくドラマや映画で中国人が「わたし ビール 飲むよ」と言っているのは、そもそも中国語に助詞がないからです。
このあたりを理解しておけば、解説が楽になります。
動詞「します」の使い方は独特
さらに日本語の動詞「します(する)」は便利ですが、便利すぎて外国人にはわかりにくことがあります。
「名詞」に「をします」をつけると動詞扱いとなるのですが、汎用性が高すぎます。行動に関係する名詞なら自然ですし、行動と関係ない名詞でもニュアンスを伝えることが可能です。
みんなの日本語では三種類の活動例をあげています。
- 運動+をします。
- 会合・催し物+をします。
- 動作に関係する名詞+をします。(買い物・宿題・仕事・デート・電話など)
この場合、助詞の「を」の前が目的語であることに注意してください。
英語の勉強をします。
英語を勉強します。
この例文の意味は同じですが「します」の前に「を」が来ない場合は「勉強します」を動詞ととらえて目的語を「英語」とします。それで「英語」のあとに助詞の「を」が来るわけです。
ただ、第6課では「英語を勉強します」の例文を勉強しませんので、うっかりと「サッカーします」とか「宿題します」と言ってしまわないように注意してください。
わたしはよく失敗します。
「なにをしますか」
相手の行動内容を尋ねるときにつかう決まり文句です。
中国語ではこういいます。
干什么?
昨天干什么?
この中国語、あまり丁寧ではないので使い方に気をつけましょう。言い方を間違えると「何してるんだ(コラぁ)」みたいな意味になります。
もちろん「なにをしますか」「なにをしましたか」にはそんな乱暴な意味はありませんね。
「なん」と「なに」の使い分け
「なん」と「なに」に意味の違いはない
「なん」も「なに」も、共に内容を質問するのに使います。しかし続くことばによって読み方が変わります。
「なん」を使う場合
発音の問題
- タ行
- ダ行
- ナ行
この音につなぐ場合「何」は「なん」と読みます。
彼は なんと言っていましたか。(タ行)
それは なんですか。(ダ行)
それは なんの雑誌ですか。(ナ行)
しかし注意すべきなのは下記の例文です。
なんで 東京へ 行きますか。
この例文の意味を通常わたしたちは「どうして 東京へ 行きますか」と理解します。つまり理由を尋ねたわけです。しかしみんなの日本語 第一版では、この例文を「移動手段」を質問する文としています。
違和感がありましたが、第二版からは次のような注釈がつけられるようになりました。
「なんで」除了可以询问手段、方法之外,还可以用于询问的理由。要想明确的表示是在询问手段、方法时、可以用「なにで」
日本語に直しますとこうなります。
「なんで」は移動手段を問う以外にも理由を尋ねるときに使用できます。もし移動手段についてはっきり質問したい場合には「なにで」を使うことができます。
どうしても「なんで」がおかしいと認めたくない口調ですね。
実際にはこうなるでしょう。
どうして 東京へ 行きますか(理由)
どうやって 東京へ 行きますか(移動手段)
とはいえ、なんでという単語を使うこともできますから2種類の意味があることを生徒に教えておいた方が無難です。理由を尋ねられて「飛行機で来ました」と答えたりしたらお互いに意味不明になりますからね。
数量詞に続く場合は「なん」と読む
数量詞の前に「何」をおいて、数を尋ねる場合は「なん」と読みます。
リンさんは 何歳(なんさい)ですか。
トンちゃんは 何年(なんねん)中国で暮らしていますか。
ミカンを何個(なんこ)食べましたか。
こちらはわかりやすいですね。
「なに」を使う場合
- タ行、ダ行、ナ行につながらない場合
- 数量詞につながらない場合
つまり上述の「なん」と読む場合以外はすべて「なに」と読みます。
昨日 何(なに)をしましたか。
何(なに)を飲みますか。
何駅(なにえき)で降りますか。
ですから、ほとんどが「なに」と読むわけです。
みんなの日本語 初級 第6課 特徴 その1
難しい単元ではないが、説明すべきことが多い
第6課は決して難しくはありません。
しかし情報量が多いので、いつもと同じ時間ですべてを教えようとすると、かなり足早になってしまいます。できれば2回にわけてじっくり理解できるように助けた方が良いです。
というわけで、わたしも第6課のまとめは2つに分けたいと思います。
みんなの日本語 初級 第6課 その2に続きます。
くまてつでした。