先回から「〜がち」「〜気味」「〜っぽい」の使い方をまとめています。
これらの3つの接尾語は、すべて「〜という傾向が強い」という意味ですが、細かい用法は異なっていますし、誤用も多いです。
というわけで、今回は「〜がち」について分析してみたいと思います。
「〜がち」は基本的に動詞に、そしてごく例外的に名詞に繋がります。
「〜がち」が動詞につながる場合
A:彼は過ぎたことをくよくよと考えがちだ。
B:花に水をやるのを忘れがちですよ。
C:最近ちょっと疲れがちだ。
例文Aは「考えます」のます形「考え」に「がち」をつないだもので、意味としては、考えることが多いという意味です。
同様に例文Bも「忘れます」のます形「忘れ」に「がち」を接続したもので、忘れることが多いという意味です。
「疲れがち」ではなくて「疲れ気味」の方が自然ですが「疲れがち」も文法的には間違っていません。
動詞の「疲れます」ます形「つかれ」に「がち」を接続したものです。疲れていることが多いということを表現しています。
「〜がち」が名詞につながる場合
D:彼は病気がちだ
E:彼女は遠慮がちに言った
F:彼女は伏し目がちに相手を見た。
それぞれ「病気」「遠慮」「伏し目」といった名詞に「がち」を接続してみました。
これらの例文を比較して見ると「〜がち」の意味が同じではないってことに気がつきます。
例文Dの「彼は病気がちだ」の意味は、病気になりやすい、つまりよく病気にかかるという意味です。
では例文Eの「彼女は遠慮がちに言った」の「〜がち」が例文Dの「〜がち」と同じであるなら、それは「遠慮すること」が多いって意味になります。そうなると、遠慮することが多いってことと、今話していることとどんな関係があるのだろうと疑問がわいてきます。つまり「遠慮がち」と「病気がち」の「〜がち」の意味は違うってことです。
例文Eと例文Fの「〜がち」は同じ意味で、それは「〜とほぼ同じ」という意味になります。
つまり例文Eの場合は「遠慮しているような感じ」で言うという意味です。
また例文Fの場合は「伏し目のような感じ」だがこちらを見たとなります。
「伏し目」とは視線を下に向けることですから、実際は伏し目を保ちながらこちらを見ることはできません。しかし「伏し目」のような状態を取りつつこちらを見ることができますので、そのことを言っているわけです。
名詞に「〜がち」を続ける用法は、意味が難しいので恐らく「N+がち」ではなくて、例えば「遠慮がち」とか「病気がち」とか「伏し目がち」といった単独の単語として教えた方が良いかもしれません。
「動詞のます形+がち」の特徴
もう一度例文ABCを確認します。
A:彼は過ぎたことをくよくよと考えがちだ。
B:花に水をやるのを忘れがちですよ。
C:最近ちょっと疲れがちだ。
例文を分析すると気がつくのですが、AもBもCも「そういう傾向」があると言っているだけです。
ですから例文Aの場合、今もくよくよと考えているかはわかりません。ただ当人の過去を考えてみると「考え込む」という傾向が彼にあることを見て取ったという事になります。
同様にBも、今も花に水をやることを忘れていると言っているわけではなくて、そういう傾向があると指摘しているだけです。
自分のことを話しているCに関しても同様です。ちょっと疲れがちだと話しても、今現在疲れているかどうかはわかりません。それはその場の空気を読んで判断するしかないわけです。
というわけで「Vます形+がち」は、動詞が示す状態や行動になる傾向があるという方法で、なおかつその状態が現在生じていようがいなかろうがどちらでも構わない文となります。
この点で「〜気味」とは異なっています。
では「〜気味」については次の記事で説明します。