先日、ある先生から「Vます形+たいです」に用いる助詞の「が」と「を」に関して質問を受けましたので、改めて自分でも調べてみました。
教える際に「NがVます形+たいです」か「NをVます形+たいです」のどちらがいいのでしょう?
まずは例文を確認してみましょう。
わたしは ラーメンを 食べたいです。
わたしは ラーメンが 食べたいです。
この 食べたい は 動詞のます形に「たい」を続けた形です。
この場合の目的語である「ラーメン」の助詞は「が」でも「を」でも構わないと「みんなの日本語」では説明しています。(みんなの日本語 初級 第13課)
しかし言葉が違うわけですから、文法的にどちらでも構わない場合でもニュアンスは違ってきます。
でも細かいニュアンスを指摘しても初級レベルでは使いこなせませんから、教えるときにはどちらかに固定してしまった方が良さそうです。
ちなみに「学ぼう!日本語」の初級1の第9課には「目的語が 〜たいです」の例文は出てきません。すべて助詞の「を」で紹介されています。
服を 買いたいです。
映画を見たいです。
カレーライスを食べたいです。
初級であれば「を」に固定した方が良さそうです。
では、どうして「が」ではなく「を」に固定した方が良さそうなのでしょうか?
それは別の文法の「Nが欲しいです」と関係してきます。
「みんなの日本語 初級第13課」でも「学ぼう!日本語 初級1 第9課」でも、「Vます形+たいです」と同時に「〜ほしいです」を学習します。
この「〜ほしいです」の場合は、絶対に目的語の助詞は「が」となります。
友達が ほしいです。
車が ほしいです。
かばんが ほしいです。
助詞を「を」に置き換えてみるとどうでしょう?
友達を ほしいです。
車を ほしいです。
かばんを ほしいです。
違和感ではなくて完全に誤用となります。
それで「〜ほしいです」と「〜たいです」を一緒に学ぶ際に「〜がほしいです」と「〜をたいです」と教えておけば、生徒は理解しやすくなります。
「Nを+ます形+たいです」と「Nが+欲しいです」を徹底しておくと、楽にはなりますが、注意も必要です。
例えば みんなの日本語 初級 第22課では「連体修飾語+Nが〜」の文法を学習します。
指導の手引きには「連体修飾語+N」が「好き・嫌い・上手・下手・欲しい・Vたいです」の対象となる場合には、助詞の「が」を伴うと説明しています。
しかし教科書の練習Cには次のような例文があります。
どんな 仕事を したいですか。
そうですね。日本語を 使う 仕事を したいです。
説明では助詞の「が」と指定していますから、本来であればこうなるべきでしょう。
どんな 仕事が したいですか。
そうですね。日本語を 使う 仕事が したいです。
もちろん、この場合も問題ありません。
でも例文にはどちらでも良いとは書いていませんし、わたしの持っている手引き書にも指摘がないので、生徒を悩ませるかもしれません。
しかし第13課で「Nを+ます形+たいです」としっかり理解しておけば、「連体修飾語+Nを+ます形+たいです」の形が出てきても迷いません。
また教科書がすべてを毎回丁寧に説明しているわけではないことを生徒に気づかせるチャンスとも言えますね。
というわけで、「Vます形+たいです」の目的語の助詞が「が」と「を」になる問題の解決方法とは・・・
「Nを+ます形+たいです」と「Nが+欲しいです」を徹底しておく
というものでした。
もちろん、「Nを+ます形+たいです」は「Nが+ます形+たいです」でもいいけど、ここでは「Nを+ます形+たいです」としますと説明を加えても良いです。
生徒の能力や性格に応じて調整していきましょう。
くまてつでした。