くまてつ@日本語教師です。
みんなの日本語 初級 第6課では目的語を伴う動詞文について勉強します。
詳しい内容は「みんなの日本語 第6課 まとめ その1」にて解説しましたので、そちらをご覧ください。
[st-card id=みんなの日本語 初級 第6課 まとめ その1 – 日本語教師.com ]
今回の「その2」では以下の項目を確認します。
助詞の「で」の使い方(動作を行う場所)
みんなの日本語 初級 第5課の復習 助詞の「で」の使い方
まずは例文を確認しましょう。
自転車で学校へ行きます。
飛行機で国へ帰りました。
タクシーで会社へ来ました。
「自転車」「飛行機」「タクシー」はともに移動手段です。
「行きます」「来ます」「帰ります」のような移動に関連する動詞を使う動詞文には「目的地」だけではなく「移動手段」という情報を追加できます。
目的地を追加する方法は「N(目的地)+へ」、移動手段を追加する方法は「N(移動手段)+で」です。
動作をする場所の「で」の使い方
第6課では移動とは関係のない動詞を用いる動詞文での助詞の「で」の使い方を勉強します。
それは「動作を行う場所」をしめす「で」です。
次の例文を比較してください。
- 彼女と映画館へ行きます。
- 彼女と映画館で映画を見ます。
例文1の動詞は「行きます」で移動に関する動詞です。「映画館」は目的地です。ですから「映画館」に続く助詞は「へ」となります。
例文2の動詞は「見ます」です。これは移動とは関係のない動詞です。「見る」という動作の対象は「映画」です。ですから「映画」の後には目的語であることをしめす「を」が来ます。
そしてここが大切ですが・・・
映画館は映画を見ている場所ですので「映画館」のあとに「で」を続けます。
彼女と神戸へ行って、それから映画館で映画を見ました。
目的地は「神戸」映画を見たのは「映画館」となります。それで「神戸へ」「映画館で」となります。
よくある誤用「へ」と「で」の問題
この「目的地」と「行為を行う場所」の区別ができずに、どちらとも「へ」を選ぶ生徒がいます。
誤)映画館へ映画を見ます。
誤)神戸へ買い物します。
場所の後は「へ」と勘違いしている可能性が高いです。
それで第5課で「へ」を教えるときに「場所」とは言わずに「目的地」というようにしておいた方が良さそうです。そうすることで第6課で「で」を勉強するときに、ここでいう「行為を行う場所」と「目的地」は同じ「地点」でも概念が違うことを理解しやすくなります。
「Vマス形+ませんか」と「Vマス形+ましょうか」はセットで覚えよう
「Vマス形+ませんか」の用法について
みんなの日本語で最初に動詞のマス形という言葉が出てくるのは第13課です。
しかし第6課ですでにマス形+ませんかの形を勉強します。それで、わたしはここでマス形について簡単に説明してしまいます。
「Vマス形+ませんか」は勧誘表現です。
勧誘表現とは「自分がおこなうことを一緒におこなうように相手に働きかける」ことです。
当たり前ですが、これには2種類あります。
それは相手に選択権がある場合と、ない場合です。
この「Vマス形+ませんか」は相手に選択権がある勧誘表現です。
ですから比較的丁寧な表現であると言えます。
正)京都へ行きませんか。
誤)(先生が教室で生徒に)授業を始めませんか。
どうして「授業を始めませんか」が変な感じがするのかというと、先生は授業をどうするか権限を持っており生徒にはないからです。それなのに先生が相手に権限があるかのように尋ねるはおかしいわけです。
「Vマス形+ませんか」は相手にも加わるよう進めるときにも使える
すでに始まっていることに加わるように進めるときにも「Vマス形+ませんか」が使えます。
正)(パーティーが始まっている状況で)君も一緒に食べませんか。
「Vマス形+ませんか」の普通形は?
普通形は第20課で勉強しますが、わたしは忘れっぽいのでここにも記載しておきます。
「Vマス形+ませんか」は丁寧形です。
普通形は「Vナイ形+か」です。
丁寧形)一緒にビールを飲みませんか。
普通形)一緒にビールを飲まないか。
丁寧形)君も一緒に食べませんか。
普通形)君も一緒に食べないか。
当たり前といえば当たり前ですが、突然聞かれるとびっくりするのが普通形の変化です。
しっかり把握しておきたいです。
「Vマス形+ましょう」の用法について
「Vマス形+ませんか」は勧誘表現で、しかも相手の意思や決定が尊重されている場合に用いる表現でした。
それに対して「Vマス形+ましょう」は自分の意思や決定が重視される勧誘表現です。
正)(先生が生徒に)授業を始めましょう。
誤)(先生が生徒に)授業を始めませんか。
当然、教師に決定権がありますから、この場合は「授業をはじめましょう」というのが正しいとなります。
また相手の誘いに応じる際に自分の決定を伝えるのに用いることができます。
[st-kaiwa1]一緒に京都へ行きませんか。[/st-kaiwa1]
[st-kaiwa7 r]え、先生と二人でですか?[/st-kaiwa7]
[st-kaiwa2]いえ、トンちゃんも一緒です。[/st-kaiwa2]
[st-kaiwa6 r]いいですね。行きましょう[/st-kaiwa6]
このように使うことができます。
終助詞の「か」の用法
基本的には、わかりました、聞いていますよの意味
しかし、ただわかったというのではなくて、知って驚いたとか、いままで知らなかったという感情が追加されます。
[st-kaiwa4]日本にきて10年たちました[/st-kaiwa4]
[st-kaiwa8 r]10年ですか!すごいですね。[/st-kaiwa8]
[st-kaiwa8 r]あなたがトン先生ですか。お目にかかれて光栄です。[/st-kaiwa8]
[st-kaiwa3]いえいえ。[/st-kaiwa3]
こんな具合です。
そうですか の「か」は第6課で勉強する「か」と同じ意味です
そうです。は肯定の意味ですが、そうですか。ということでいくらか驚きの気持ちや、今までそのことをしらなかったという気持ちを込めています。
この用法はすでに第2課で勉強していますので、そのときに「そうですか」は驚きの気持ちや、いままで知らなかったという気持ちがこもっていると説明しておけば、第6課での学習が楽になります。
みんなの日本語 初級 第6課 の特徴
日本語で一番重要なのは「述語」であることを再確認しよう
特に動詞文の場合、動詞の種類により文法に変化が生じます。
移動に関係する動詞なのか、目的語を伴う動詞なのかにより、選ぶべき助詞の種類も変化します。
それで繰り返し述語が大切と強調し、
- まずは名詞文なのか動詞文なのか、
- 動詞文なら動詞の意味はなにか?
- それぞれの名詞の格はなにか?
こういった項目を確認しつつ、生徒が正しい選択を行えるように助ける必要がありそうです。
「ましょう」「ませんか」は使い方を間違えると大変
すでに述べたとおり「Vマス形+ませんか」は相手の意思が尊重されており、「Vマス形+ましょう」は話し手の意思が重視されています。
ですから使い方を間違えると相手から優柔不断と思われたり、偉そうなやつと思われる可能性があることを実例を用いつつ紹介していくと面白いです。
実例を用いて授業を進めると生徒が思いがけないことを言ったりして文化の違いを感じることもできます。
ぜひ試してみてください。
くまてつでした。