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みんなの日本語 初級 第8課 まとめ その1

くまてつ@日本語教師です。

みんなの日本語 第8課では形容詞文を勉強します。

イ形容詞とナ形容詞の違いについて

日本語教育ではイ形容詞とナ形容詞という言葉を使いますが、日本語教師になるまでその単語を知りませんでした。形容詞と形容動詞のことですが、この区別が結構生徒には難しいようです。「い」の発音で終わる形容詞が「イ形容詞」それ以外が「ナ形容詞」と覚えてしまうと「きれい」とか「有名」といった形容詞がどちらに属するかわからなくなるようです。

わたしは中国語母語者に日本語を教えていますので、結構使えるのが「イで終わっても中国でも使われている形容詞のほとんどがナ形容詞です。つまり漢字で書けるものはナ形容詞」という区別の方法です。

「きれい(綺麗)」「ゆうめい(有名)」以外の「い」で終わるナ形容詞の例

あんい(安易) かれい(華麗) ごうかい(豪快) こうへい(公平)
じざい(自在) せんめい(鮮明) ていねい(丁寧) にんい(任意)
ようい(容易)

送り仮名に「い」がついてもナ形容詞の場合。

きらい  嫌い

ルーツに例外が多いのが日本語の特徴ですね。困ってもしょうがないので、細かいルールを逃さず教えることに専念しましょう。

第8課で取り上げる「ナ形容詞」の一覧

綺麗 賑やか 有名 便利 元気
静か 親切 ハンサム 素敵

「賑やか」「静か」は漢字だけの単語ではありません。でもナ形容詞です。「嫌い」と違って「い」で終わってはいませんので間違えることはあまりないです。

第8課で取り上げる「イ形容詞」の一覧

高い 寒い 古い 面白い 大きい
楽しい 忙しい いい* 悪い おいしい
あつい 新しい 易しい 安い 低い
青い 冷たい 難しい 赤い 白い
黒い 小さい

*イ形容詞の「いい」は要注意です。もともとは「良い(よい)」でしたが、「いい」へと変化しました。活用の変化でも取り上げますが「いい」は非過去肯定の時にのみ使え、それ以外は「良い」の変化となります。

形容詞文の活用に関して

ナ形容詞文の活用は名詞文の活用と同じ

ナ形容詞文の活用 活用方法
非過去・肯定 ナ形容詞+です きれい です
非過去・否定 ナ形容詞+じゃありません きれい じゃありません
過去・肯定 ナ形容詞+でした きれい でした
過去・否定 ナ形容詞+じゃありませんでした きれい じゃありませんでした

第8課では「過去」の活用方法については扱いませんが、どうせですからセットで紹介しておきます。

イ形容詞文の活用はちょっと複雑

イ形容詞文の活用 活用方法(かわいいの場合)
非過去・肯定 かわい いです
非過去・否定 かわい くないです
過去・肯定 かわい かったです
過去・否定 かわい くなかったです。

イ形容詞の最後のイより後の部分が変化します。

例の「かわいい」の最後の「い」を取ると「かわい」となります。ここは変化しません。それ以降が変化します。わかりにくいので、もう一つの例を挙げます。

イ形容詞文の活用 活用方法(寒いの場合)
非過去・肯定 寒いです
非過去・否定 寒くないです
過去・肯定 寒かったです
過去・否定 寒くなかったです

この場合「寒い」の「い」以降の部分が変化します。

形容詞ですから直接名詞を修飾できます。

ナ形容詞の場合「な」が必要です。

ナ形容詞を使って名詞を修飾する例文です。

親切な先生です。
摩周湖はきれいな湖でした。
元気な赤ちゃん

ナ形容詞の場合、名詞と接続するために「な」が必要です。

イ形容詞の場合は「そのまま」名詞に続けます

イ形容詞を使って名詞を修飾する例文です。

赤い靴を履いた女の子
難しい本を読みました。
かわいいネコを見つけた。

実は中国語母語者にとってイ形容詞の方が難しいです。

例えば例文をこのように誤用します。

誤)赤いの靴を履いた女の子
誤)難しいの本を読みました。
誤)かわいいのネコを見つけた

イ形容詞と名詞の間に「の」を加えてしまう誤用がみられます。

これは中国語の文法に影響を受けているためです。中国語ではそれぞれこのように言います。

红色的鞋子
很难的书
可爱的猫

このように形容詞と名詞の間に「的」が入ります。実は形容詞と名詞を日本語のような順序で言おうと思えばすべて「的」が必要となります。

それで、中国語母語者はナ形容詞の場合「な」を「的」と同じととらえ、イ形容詞であれば「的」と同じ意味と推測した「の」を追加してしまうという間違いをします。中国で生活している日本人夫婦の子どもさんも「辛いのラーメン嫌い」とか「かわいいの猫」という表現を連発していました。その子の中国語はとても上手ですから、中国語が日本語に影響を与えているのだろうと思います。

話題がそれますが、その子と日本語で会話すると、中国語母語者が日本語を学ぶ際に直面する問題にたくさん気づかされます。

「とても」「あまり」といった副詞を使って形容詞を修飾する方法

形容詞は名詞を修飾できる。副詞は形容詞を修飾できる

副詞にもいろいろありますが、ここでは程度が大きいことを示す「とても」と「あまり」を勉強します。

肯定文につかう「とても」

褒め言葉に使う場合の「とても」は便利

彼はとても優秀な生徒だ。

優秀というナ形容詞に「とても」をつけることで優秀さをさらに強調しているわけです。

しかし「とても」には実は特に深い意味はありません。

「彼は優秀な生徒です」と紹介しても、「彼はとても優秀な生徒です」と紹介しても、特に優秀さに違いはありません。でも褒め言葉に使うときには「とても」を付けた方が語感がいいですし、積極的に褒めている感じもします。

このあたりの感覚は中国語と同じです。

她很聪明(彼女はとても賢いです)

この中国語の場合、「とても」に相当する「很」を付けるのはルールです。別に特別にすごくなくても褒めるときには「很」をつけます。「很」をつけることが当然で、ないと変な感じがするそうです。日本語の場合も、同じ感覚で「とても」をつけると説明してもいいと思います。

ちなみに中国の地方によりますが、「她很聪明」と言えば、その場にいつ他の人も賢いが彼女は特に優秀という意味となり、ただ「她聪明」と言うと、その場にいる他の人はバカだと言う意味となることもあるようです。大連の生徒はその通りと言っていましたが、広東省出身の方は、そんなことはないかなと言っていました。要注意ですね。

シンプルに強調したいときも「とても」を使います

北京はとても寒い。
北京は寒い。

「とても」のあるなしでニュアンスがずいぶん違います。「とても寒い」と言えば厳しい寒さを連想しますが、ただ「寒い」と言えば事実を述べただけですので、強い寒さを連想するところまではいきません。

程度は甚だしい、もしくはずば抜けているときに「とても」を使います。

否定文に使う「あまり」

いくらか語気を弱めるのに使う「あまり」の用法

彼は中国語があまり上手ではない

実際、中国語が上手ではなくても「あまり」を付けることで語気を弱めます。これも中国語の用法と同じです。

他的中文不太好

「不太」が「あまり」に相当しますが、良くないと断定してしまうのではなく、それほど良くはないという言い方にすることにより語気を弱めています。

それほど程度が悪くない場合につかう「あまり」

ですから「あまり」を加えた否定文の場合、意味は曖昧になります。

今日のカレー、あまり辛くないね
今日はあまり寒くない
あの大学はあまり有名でない

どれも、辛いのか辛くないのか、寒いのか寒くないのか、有名か有名でないのかと言うと、辛くない、寒くない、有名でないという意味になります。

しかし、全く否定することもできないので「あまり」という言葉を使います。

中国語に「不太」という言葉があり、同様のニュアンスを伝えてくれていますので、中国語母語者に教える際には、あまり細かい意味を伝えずに「不太」と一緒だよって教えたほうが良いと思います。

第8課の内容は形容詞だけではない

形容詞の活用と副詞の利用は絶対にマスター

ここで形容詞の活用を完全にマスターすることは絶対です。

第9課から「名詞文」「動詞文」「形容詞文」それぞれに使える文型や、より複雑な構文が続出します。それで時間をかけて繰り返し活用方法をマスターさせましょう。

さらに名詞に接続する方法についても「イ形容詞」と「ナ形容詞」の用法が混同しないように区別します。加えて「の」などの誤用を前もって注意するなど、リスク回避に努めましょう。

第8課は内容が豊富なので「その2」へ続きます。

さらに「接続詞のが」「どうですか」「どんな+N」など重要な文型を勉強します。

くわしいことは「みんなの日本語 初級 第8課 まとめ その2」へ続きます。

くまてつでした。

ABOUT ME
くまてつ先生
中日・英日翻訳者。中国語母語者にマンツーマンで日本語を教えています。教えた生徒はすでに40人以上。ほとんどが日本へ留学しています。また日本語教師向けのセミナーを毎月2回開催しています。